2017年03月05日

人生が変わるCafe「人と本と旅」〜山下 有希乃 46歳 メディア編集会社経営 〜

山下 有希乃さん 46歳 メディア編集会社経営

大企業でずっと広報の仕事をしていた。その後仲間に誘われて転職をした。
しかし、うまくはいかなかった。自分の内側の声を無視して、外からの評
価こそが自分の拠り所だとして生きていた。そんな私が、今、人生の転機
を迎えている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
“このたび、起業することになりました。小さな小さなメディアではあり
ますが、各地に眠る素晴らしいモノやそれをつくる人にフォーカスをし、
取り上げながら、その人の人生も含めて伝えていきたいと思っています。
そして、私たちのメディアを通じて、本当に素晴らしいモノ、人が、本当
に伝わってほしい人に伝わればと強く思っています。”
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「これでよしっと。」

挨拶状の原稿を書き終わった私は、ホッと一息ついて、スタバのパイクプ
レイスローストの豆で挽いたコーヒーを一口飲んだ。

いつもながら、雅美の入れるコーヒーは、本当に絶品だ。彼女はバリスタ
でもある。昔アルバイトをしていたとあるcaféでバリスタの資格をとろう
と決めたんだと言っていた。

なんでもそのcaféは、外壁は蔦(つた)に覆われ、入口の近くにはオーナー
のこだわりを感じる可愛い手作りポストが置いてあり、10人も入ればいっ
ぱいになってしまうような小さなCaféだと言う。

「私は効率より、一つひとつ丁寧に味わって生きたいと思っている」とい
う雅美の口ぐせ、どうやらそこのオーナーに影響を受けてのものらしい。

そんな雅美がいてくれたからこそ、私は今こうして、本当の自分の人生を
生きようと決意することが出来たんだと思う。

コーヒー.jpg

私は外資系企業に勤めていた。広報のマネージャーだった私は、日々仕事
に忙殺されながらも、高い給与と最年少女性役員候補としてのプライドに
やりがいを感じていた。

3年前、入社して1年くらいした頃、夫から「俺たち、もう一緒にいないほ
うがいいんじゃないか?」と言われ離婚をした。正直、そうなるんじゃな
いかっていう予感もあって、意外とあっさり別れてしまった。

でも、自分が思う以上にダメージが大きかった。私は女としての価値がな
いんじゃないか? と自己嫌悪の気持ちが湧くたびに、それを打ち消すかの
ように仕事に打ち込んだ。意地になっていた部分もあると思う。私に対す
る社内での評価は自分の価値を証明するかの様なハードワークと比例する
かのようにどんどん高まっていった。

しかし、心の底では、満たされずに叫んでいる自分がいることに気づいて
いた。気づきながらも、「そんなはずはない」と言いながら、その声をも
っと心の奥底のほうに押しやっていた。

夫と別れてから1年、つまり、今から約1年前、私は雅美に再会をした。久
しぶりに会いたくなって連絡をしようとしたら、なんと彼女から連絡があ
ったのだ。なんというシンクロだ。

彼女は再会の場所に、『人生が変わるCafé〜人と本と旅』という場所を指
定してきた。

adriana-velasquez-110184.jpg

「ずいぶん大仰な名前ね。」雅美が指定したCaféの名前を聞いて、私は彼
女にそう言った。人生なんてそう簡単に変わるわけない。いや、もしかし
たら簡単に変わるのかもしれない。自分が思ってもみない方に。なんでこ
うなっちゃうんだろう…という理由の見えない後悔とともに。

雅美とは大学時代からの親友で、20代の頃はよく一緒に遊んでいた。私と
は見た目も性格もまるで正反対なのに、なぜか不思議とウマがあった。人
に何か言われるとよく反発していた私も、なぜか彼女の言うことには素直
になれた。

「有希乃、忙しそうね。ちゃんとご飯食べてる?」

あいかわらず、雅美は優しく、そして見た目はとても40代半ばとは思えな
い。どう見ても30代半ばだ。私もそれなりに若く見えるが、私のように張
り詰めた雰囲気がない。その癒し系の雰囲気がまた彼女をより幼く見せて
いるところがある。

私は、雅美の前では、弱さを見せることが出来る。本当に彼女の存在に救
われている。今私が抱えている葛藤、言葉にならない不安感、それから、
周囲の評価とは裏腹の、なんだか虚しい感覚なんかを話した。

「ねえ、有希乃はさ、周りの評価とか、お金とか、地位とか、そういうの
を一切横に置いて、本当にやりたいことは何?って訊かれたらなんて答え
る?」

「どうしたの、雅美?唐突に」

「いいから、教えて。聞いてみたいの。有希乃の本当の声。」

「私の本当の声?」

「そう、本当の声。」

「いや、私は今の仕事は満足してるわよ。確かに葛藤や不安や虚しさみた
いなものは感じるけど、それはまだ、私が更なる高みにいくために・・・」

「有希乃、本当にそうなの?」

雅美は私の言葉を遮るように、言葉を重ねた。雅美がそんな風に返してく
ることは珍しい。

「今の有希乃は、重たい鎧をまとって自分の外側を固めているみたい。自
分を測るものを全て自分の外側につくっているっていうか…たとえば、評
価される自分、憧れられる自分、すごいと言われる自分…とかさ。」

雅美にそう言われて、ハッとした。思えばいつも自分の価値を測るもの、
証明してくれる何かをずっと探していた。ブランドに身を包み、誰もが名
前を知っているような会社にこだわり、まるでファッションかのように結
婚もし、汐留のタワーマンションに住み…とにかく周りがいかに羨望の眼
差しを自分に向けるかに執着していた。

ラグジュアリー.JPG

「でもね、本当に望んでいることは外側じゃなくて、あなたの内側にある
はずよ。それは誰かに評価されるものではなく、どう見られるかなんてこ
ともどうでもよくて、それをしていると心の底から満ち足りた感覚を感じ
られるような何かが、きっと内側にあるはず。」

「そんなこと言われても…。」

「ねえ、有希乃覚えている? 25の時に一緒に秋田に行った時のこと。」

もう20年以上になるが、そういえば雅美とはよく旅をした。その一つに秋
田に行ったような気もする。

「あの時にね、有希乃が言ったこと、私今でも覚えているの。いや覚えて
いるというより、それが叶ったら素敵だと思っている私の夢。」

「夢?」

「そう、夢。」

「有希乃はね、あの時に、『日本には世界に誇れるような、本当に偉大で
小さなものづくり、伝統を継ぐ人たちがたくさんいて、その価値を、当人
も自覚しなきゃいけないし、もっともっとたくさんの人に知ってもらいた
い。いや、知ってもらわなきゃいけないんだ』って言ってたの。」

「私ね、実は今、週に1、2回くらい、このCaféでバイトしているの。私
もね、このまま私どうなっていくんだろう?って漠然とした不安と焦りが
あって…。いろいろあって前の会社も1年前にやめちゃって…」

雅美もいろいろ苦労してきたんだ。そういう顔を見せない雅美ではあった
が、うつむき加減の顔に、寂しさや彼女の葛藤がなんとなく映って見えた。

「そんな時、名前に惹かれてこのCaféに寄ったの。そこでここのオーナー
の鵜川さんに会ったの。彼はビジョナリーワークデザインというプログラ
ムの個人向けキャリアセッションをしていて、ちょうど私はこのモヤモヤ
を誰かに聴いてもらいたいと思っていたから、1度ライトセッションとい
うのを受けさせてもらったの。」

そう言うと、雅美はコーヒーを一口飲んだ。そのコーヒー豆は、バリスタ
である雅美がセレクトして仕入れたものらしい。

luke-chesser-48.jpg

「そしてね、鵜川さんが、“自分のこの先の未来を見つけるまででもいい
ので、ここで少し手伝ってみる?“って言ってくれたの。」

「Caféを手伝いはじめてからも、セッションは定期的にやってもらってい
てね。ある時、私がさっき有希乃にしたのと同じ質問を鵜川さんからされ
たの。周りの評価とか、お金とか、地位とか、そういうのを一切横に置い
て、本当にやりたいことは何?って。その時に浮かんだのが、有希乃が昔
言っていた一言だったの。」

「ねえ有希乃。あの頃の夢を、私と一緒に形にしてみない?」

あまりの驚きに、私はコーヒーを吹き出しそうになった。

「何、雅美?!とつぜん何を言い出すの?」

雅美の目は真剣だった。

「私は、有希乃も知っていると思うけど、割と文章を書くのは得意だと思
うの。」

「そりゃ、もちろん知っているわ。得意も何も、あなたのライターとして
の腕は一流よ。それは私が保証する。でもあなた、そのライターの道をあ
きらめたじゃない。」

「そう、私ね、仕事でずっと記事を書いている時、何のために書いている
んだろう?ってわからなくなっちゃったの。私は誰のために、何のために
記事を書いているんだろうって。自分の考えと社の方針の違いから、記事
を書くことを苦しく感じることもよくあった。」

「でも、プロのライターとして、求められている方針に従い、どんな分野
の記事も書いていくことは当然といえば当然でしょ。」

「そうなのかもしれないね…。でもね、私はその違和感に耐えられなかっ
たの。会社をやめてからは、ライターとは違う仕事をしようと思っていろ
いろやってみたわ。面白いと感じたこともたくさんあったし、素敵な人た
ちとの出会いでとっても楽しく仕事ができていると感じたこともあった。
でもね、なんかやっぱりモヤモヤしていたの。」

私は真剣な雅美の表情から目をそらすことが出来なかった。

「そんな時、鵜川さんからの問いかけに浮かんだのは、有希乃が語ってく
れた夢だったの。私は自分の才能や力を、本当にいいと思うものや人、応
援したい人のために使いたいって思ったの。あの有希乃の夢を、有希乃と
私と一緒に形にすることができたら、どんなに素晴らしいだろうって思っ
たの。」

私の頭の中に、イメージが次々と浮かび広がっていった。日本の美しい里
山、伝統的なモノや行事の数々、小さいながらも素晴らしい企業や人、そ
の人たちの笑顔、佇まい、日常の営みや、ひとつひとつ魂を込めた仕事ぶ
り。まるで小説かのような、映画のワンシーンかのような映像や写真、そ
して、雅美の文章。WEBとリアル、メディアと旅、地域発世界へとつなが
る町の産業、本当に自分を活かせるはたらき方を求めてくる若者が後継者
となっていく姿…etc.

秋田201702@.JPG

秋田201611@.JPG

人生が変わる瞬間というのは、実はたくさんあるのかもしれない。小さな
選択ひとつひとつが人生をつくっていると考えるのであれば、それは無数
にあるだろう。しかし、その中でも、ゴトッと音を立てて変わるような瞬
間というのが、人生の中にはいくつかある。

そう。あのCaféでの雅美との会話は、まさにそんな瞬間だった。

「“人生が変わるCafe”とはよく言ったものね。」私は一人呟いた。実は
あのCaféのオーナーの鵜川さんは出資者の一人であり、私たちの新会社の
顧問をしてもらっている。

彼の手がける地域活性ブランディングは、その地域の一人一人にVisionを
描いてもらい、内なる想いを思い出させ、“誇り”というものに氣がつか
せてくれる対話が中心だった。それは、まさに私がイメージした展開には
不可欠と感じて顧問をお願いしてみたのだ。

彼は
「君たちがやろうとしていることはVisionary Workerを育み応援するこ
とそのものだから、すごく共感している。」そう言って、私たちのバック
アップを快く引き受けてくれた。

私の人生が、こんな風に展開していくなんて本当に思いもしなかった。確
かに人生なんて簡単に変わる。自分が思ってもみない方向に。しかし、そ
れはいつも悪い方向ばかりではない。心にある夢と、それをわかちあって
くれる仲間がいれば。

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【バックナンバー】

1.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜序章〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/177792765.html

2.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜今井航 33歳 SE〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/177913443.html

3.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜由井ナナ 38歳 主婦 一児のママ〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/177979594.html

4.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜中岩 浩二 56歳 営業課長〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/178089740.html

5.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜野尻 まき 28歳 商社勤務〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/178261453.html

6.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜奥 ひろこ 33歳 日替わりカフェのオーナーの一人」
http://visionarywork.sblo.jp/article/178463919.html

7.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜伊藤 政人 34歳 メーカー海外支社勤務」
http://visionarywork.sblo.jp/article/178731592.html


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2017年02月11日

人生が変わるCafe「人と本と旅」〜伊藤 政人 34歳 メーカー海外支社勤務〜

伊藤 政人さん 34歳 メーカー海外支社勤務


ベトナムに赴任して、もう2年になる。僕の勤める会社は世界中に支社を持
つ機械部品メーカーで、僕はベトナム支社の財務マネージャとして赴任して
いる。

今、会社勤めをする傍ら、有志の現地駐在の日本人と、日本語がまあまあ使
える現地の人たちと共に、座談会を定期的に開いている。

テーマはVisionary Work。
自分のビジョンは何か? 自分が創りたい、そう生きたい未来はどんな未来か?
そんなことを互いに語りあい、時にはそこからワーキンググループが生まれ、
新しい活動がはじまったりする。

現地のメンバーには、日本語を教える絵本読み聞かせワーキンググループや、
元歯科衛生士である、わたしの妻が中心となって歯磨きを啓蒙するグループ
などがあり、ワークショップを開いている。

1年前の自分を想像すると、今の自分がこんなことをやっているなんて信じら
れない。たった一つの出会いが、人の人生を変えるということが、本当にある
んだ。


今から約1年前。
2週間という長めの休みを利用して日本に帰国していた僕は悩んでいた。

「もう、今の会社をやめよう」
今の会社の中で、自分の将来をイメージした時に、ポジティブなイメージが
浮かばなかった。目立ったトラブルはないが、大きな変化もなく、日々淡々
と過ぎていくような感覚。

そんなことを思っていた僕は、この機会を利用して、興味のあるNPOや企業の
人たちと会ってみた。

みんな、キラキラしていて、眩しかった。それに引き換え自分は…。会って
話を聞くたびに、ワクワク感よりも焦りや不安が増していった。

「このままじゃマズい、このままじゃ。でも、今の会社を離れるなんて本当
に出来るのか?子どもはまだ小さいし…。 給与だって決して悪くない。ポジ
ションもマネージャだ。仕事が嫌でしょうがない訳じゃない…。でも、なん
か違うんだ。なんかこのままじゃダメなんだ…。」

そんな時、昔から一緒によくフットサルをやっていた仲間の一人、タケから
「久しぶりに一緒に球(たま)蹴るか?」とフットサルの誘いがあった。

サッカーボール.jpg

翌日、久しぶりに昔の仲間と思いっきり汗をかいて、すっきりした。でも、心
のモヤモヤはまだ拭えなかった。

「タケさ、お前、今、人生楽しいか?」
フットサルの後に行った飲み屋で、タケに訊いてみた。

「なんだマサト。お前、人生悩んでるのか? 順調そうだけどな?」

僕はタケに、今感じている漠然とした不安や焦り、いろんな人の話を聴けば
聴くほど、それが強くなっていったことなんかを思うままに話してみた。

「そっか。で、マサトは何やりたいんだ?」
そうタケに問われた時、言葉に詰まった。出てこない…。何をやりたいかが
分からない。自分が自信を持って出来るって言えるものが何もない…という
より、よく分からない。断片的にはあるのだが、でも、それもなんか違うよ
うな…。

「マサト。今、自分が何したいかよく分からないって思ったろ? 自分が自信
を持って出来ることなんて何もないって感じか? でもな、何もないんじゃな
い。今までそれを見つめて言葉にしてこなかったんだよ。自分の内側と対話し
てないだけなんだ。」

「タケ…。」

「って、偉そうに俺も言ってるけど、俺も少し前はそんな感じだったんだよ。
でも、ある出会いから俺は変わったんだよ。まあ、今のセリフもその人から、
俺がそのまんま言われたことなんだけどな(笑)」

タケは、そう言っていろいろ話してくれた。
タケは自分で会社を立ち上げた。フットサルの素晴らしさをもっと世の中に伝
えたい!もっと心が動く瞬間をたくさんつくりたい。誰でも気軽に参加できて、
夢中になってボールを蹴られる機会があれば、心も体も元氣になる。フットサ
ルを通じてどんな人とでも仲良くなれる。そんな想いを形にしたのだ。

その会社を立ち上げて1年くらいの時、小さいながらも事業はまずまず形にはな
っていたが、それとは裏腹に、実は、心はどん底にいたらしい。

「なんのためにやっているのか?俺が本当にやりたいのはこれか? 俺だからこ
そ出来ることなんて何もない。誰だって出来ることしかやってない…。」

そんな時に、あるカフェに立ち寄ったのが運命だった。

『人生が変わるcafé 〜人と本と旅』
そこで、オーナーの鵜川さんに声をかけられた。後から聞いた話だが、たまた
まサッカー好きだった鵜川さんはタケの会社のことを知っていたらしく、ロゴ
のついたボールバックに目が留まり、声をかけたんだそうだ。

鵜川さんは、Visionary Work Designというコンセプトで、一人でも多くの人が
自分らしい生き方やはたらき方をして、それが世の中をよくしていくような、
そんな世界を創りたいというビジョンを持っているらしい。

タケが入ったカフェは、鵜川さんの
「一人でも多くの人が、自分のVisionary Workを生きるきっかけと出会う場所
を作りたい」という強い想いから生まれたんだそうだ。

スナフキンとキャリアデザイン.jpg

タケは、自分にとってのVisionary Workとは何かという問いに、あらためて真
剣に向きあった。そのcaféの片隅の席で、3週間に一度3時間ずつ鵜川さんと対
話をしながら、自分の想いや、あいつの会社のVisionになっている言葉を紡い
でいく。一つ一つ丁寧に言葉にして、整理をしていくプロセスを通して、自分
の視界がどんどんクリアになっていったという。


タケは、その時に鵜川さんに紹介された『自分未来編集』という本のことを教
えてくれた。そこには、たくさんの問いとその解説が書かれていた。僕はすが
るような思いで、その問いに答えていく。

そして、鵜川さんにメッセージを送ったんだ。

それから、約半年。スカイプでベトナムと日本を繋いでの対話セッションが続
いた。鵜川さんの映像の背景にはインテリアとして置かれているガジュマルが
いつも映っていた。そこは彼がcaféでセッションする時に使うお気に入りの席
ということも教えてくれた。

ガジュマル (2).jpg

彼とのセッションで印象深かったのは、話をしていくうちに、不思議なことに
会社をやめるとかやめないとかがどうでもよくなっていたことだ。自分のやり
たいこと、大事にしたいことが明確になればなるほど、今までは会社を離れな
いと出来ないと思っていたことも、いながらにしていくらでもやりようがある
ことを知っていったのだ。むしろ、今ここにいるからこそ出来ることもたくさ
んあることに氣づかされて、それも自分にとっては嬉しい驚きだった。

このcaféには、オンラインコミュニティもあって、そこに自分のVisionを掲載
すると、そのコミュニティ上で共有される仕組みになっている。自分のVision
に対して、いろんなアイデアやコメントがもらえて、それを見ていると、逆に
何からやればいいか迷うくらい、やりたいことが溢れてくる。

ある時、鵜川さんに、「自分も一人でも多くの人がVisionary Workをできるよ
うなサポートがしたい」ってことを話してみた。セッションをすればするほど、
自分がしたいことは、まさに鵜川さんがやっているようなことだって氣づいた
んだ。

「今の会社の中でも、外にコミュニティをつくっても、どちらもやってみたら?
基本的なコンセプトさえ理解してくれたら、あとはマサトが自分流にアレンジ
してやったらいいよ。最大限サポートするよ。」

鵜川さんは、そう言ってくれた。とはいえ、何からやったらいいんだ…。自分
に出来るのか?周りから変な目で見られるんじゃないか…。

いざ、「やってみたらいいじゃん」って言われると、自分の中に次々と怖さと
か不安が湧いてくる。

「そういう怖れの感情は、それだけ自分が本当にやりたいことに近づいてる証
拠だよ。本当にやりたいことだからこそ、それがうまくいかない状態になって
しまうのは絶対に避けたいって強い恐怖感が出てくるんだ。でも、そのほとん
どが自分の思い込みがつくってるドラマなんだよ。やりたいと思う。やってみ
る。何かが起こる。修正する。またやってみる。ただそれだけだよ。仮にうま
くいかなくてもそれはプロセスの一部。そこで立ち止まったらその先に見られ
る最高の景色を見損なっちゃうよ。それでもいいならいけどね(笑)技術的に
はファシリテーションとかコーチングとかを少し学んでみるといいと思う。関
心があるなら効果的な学び方を教えるよ。」

扉を開く.jpg

そんな風に言われる度に、小さな一歩を踏み出して、また少し戻って、また踏
み出して。想いが少しずつ形になっていき、いつの間にか、そんな自分を楽し
めるまでになっていった。

あのセッションが終わってから半年。久しぶりに日本に帰国した。

今日はあのセッションの後からこの半年の間に起きたこと、そして新たに生まれ
た次の夢の話を伝えるために、鵜川さんに時間をもらっている。場所はもちろん
『人生が変わるcafé 〜人と本と旅』

待ち合わせの1時間も前に着いた僕は、あのガジュマルのそばの席で、caféの人気
メニュー『ヒロコ'sカレー』を食べながら、この後の時間にワクワクしていた。

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【バックナンバー】

1.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜序章〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/177792765.html

2.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜今井航 33歳 SE〜」
http://visionarywork.sblo.jp/article/177913443.html

3.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜由井ナナ 38歳 主婦 一児のママ〜」
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4.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜中岩 浩二 56歳 営業課長〜」
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5.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜野尻 まき 28歳 商社勤務〜」
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6.「人生が変わるCafe「人と本と旅」〜奥 ひろこ 33歳 日替わりカフェのオーナーの一人」
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2017年01月19日

人生が変わるCafe「人と本と旅」〜奥 ひろこ 33歳 日替りカフェのオーナーの一人〜

奥 ひろこさん 33歳 日替りカフェのオーナーの一人


「自分のカフェを持つのが夢なんです」思えばあの時のあの一言が、
わたしの人生を大きく変えたのよね。

今はもっともっと夢が広がってるけど、あの時のわたしにとっては、
そんなことが自分の口をついて出てくるなんて思ってもみなかった。

わたしの主人は小さな設計事務所を個人開業していて、わたしはそ
んな彼のしごとをサポートしている。結婚したのはいまからもう9
年前。24歳の時。結構早かったと思う。わたしも彼もまだ学生で、
でも当時から彼には夢があって。その話を聞くのがとっても楽しか
った。

彼は、「一人ひとりが「自分の夢の場所」を持てることを実現する
設計士になる」ってずっと言ってたな〜。そんな彼の話を聞いてい
ると、本当にわたしの心がうれしいって言っているのがわかって、
朝まで彼の話に付き合ってたことも何度もあった。

だから、わたしは彼の夢を支えることができている自分がとっても
幸せだと思ってもいる。でもそんなある日、彼が唐突にわたしに聴
いたのよね。「ひろこはさ、なんか夢とかってあるの?そういえば、
昔からいつも俺の話ばっかりで、ひろこの夢って聴いたことなかっ
たよね」
わたしは、彼の夢を支えるのがわたしの夢だって答えたの。そう答
える私の言葉に、彼もきっと喜んでくれると思った。

「ひろこさ、それって本当の夢なのかな? じゃあもし、俺が俺の
夢をあきらめたらひろこは自分の夢がなくなるってこと? もし俺
が死んだら、ひろこの夢も死んじゃうってことなのかな?」

まさか、そんな答えが返ってくるとは思わなかった。すこしショッ
クだった。彼はわたしのことが重荷になったの?自分の夢をもてな
い私を軽蔑してる?わたしが彼を支えていきたいってことが彼にと
っては嬉しくないってことなの?

頭の中がぐるぐるして、何も言葉を返せなかった。

彼は、そんなわたしのぐるぐるなど、全く意に介していないかのよ
うに、「まっいろいろ考えてごらんよ」なんて氣楽な調子で言って、
またしごとをはじめた。

スケジュール帳.jpg

「ひろこ、久しぶりね」
今日は、昔からの親友でもあり、いつもわたしの悩みを聞いてくれ
るわたしのメンターでもある、はるみとランチ。最近話題になって
いる面白いCaféがあるからと誘ってくれた。

「「人と本と旅」へえ、なんか面白い名前のCaféね。人生が変わる
Caféね〜 そっか…。」

「面白いでしょ。わたしねここのオーナーの鵜川さんと仲良しでね。
実は今、彼と一緒にある面白いプロジェクトをこのCaféをつかって
やろうと思っているの。まあ夢を応援するCaféみたいな感じかな。」
あいかわらずはるみは、パワフルだ。

「ひろこ、なんか元気なさそうだけど、だいじょうぶ?」そうはるみ
に問いかけられた。そういつも、はるみはわたしの心の中が見えてい
るかのように、わたしのことを察してくれて、いつもいいアドバイス
をくれたりする。これはもう神業としか思えない。わたしははるみに
彼から言われたこと、それに対してわたしがぐるぐるして思い悩んで
いることを洗いざらい話してみた。

「そっか〜」はるみはハーブティを一口飲んでから、そう一言つぶや
いた。

「そういえば、ひろこはさ、昔から料理得意だったよね。ごはんだけ
じゃなくお菓子とかももう抜群に美味しくて、わたしはひろこが私の
奥さんになっていつもごはんつくってよって思ってたくらいよ。。。
まあそれは半分冗談として、でも本当に美味しかった。いつだったか、
ひろこの彼とひろこと、わたしとわたしの彼と4人で伊豆に一泊で旅
行いったの覚えている?」

そういえばずいぶん前にそんなことあったっけ。まだ学生の頃で、で
もはるみはもう社会人で。

「その時に、ひろこの彼が、自分の夢を熱く語ってたっけ。すごいよ
ね今その夢をどんどん形にしているもんね。それで、その時ひろこが、
わたしの夢の場所は、小さなCaféって言ってたの。ひろこ覚えてる?」

「あたし、そんなこと言ってた?」

「うん楽しそうに話してたよ。たくさん人が来てくれなくてもいいけ
ど自分の大切な人がいつも遊びにきてくれて、わたしはその人にあわ
せておいしいごはんとかおやつとかつくってあげたいなんて話してた
よ。」

「え〜そうだったっけ?」

「そうよ〜 そしてね、そんなひろこの話を、彼はうれしそうに聞い
ていたな〜。なんかあの光景がわたしすごくほっこりして、すっごく
幸せな気持ちになったのを今でも覚えてる」

ハーブティ.jpg

はるみとのランチの帰り道、わたしはすこしだけ寄り道をした。学生
時代、よく一人で行ったCafé。

「確かこのへんだったはずだけど…、あっあった」

そのCaféは10人も入ればいっぱいになってしまうような小さなCaféで、
外側はつたに覆われている。入口の近くに可愛らしい手作りポストと、
「今日のコーヒーとおやつ」が書かれた小さな黒板型の立て看板が出
ている。「かわらないな〜」


中に入ると、懐かしい顔がそこにはいた。
「ゆみこさん!」カウンターの中にいた40半ばくらいの優しそうな女
性が、おどろいたような顔をしてこっちを見た。

「あれっもしかして、ひろこちゃん?、懐かしいね〜 元気にしてた
の?」

マスターのゆみこさんは、わたしの憧れの人だった。旦那さんは商社
マンで、1年のほぼ2/3くらいは海外出張している。


わたしは、ゆみこさんに、彼から言われた話はしなかった。そのかわ
りに、わたしが学生の頃、ゆみこさんに憧れて、こんなCaféをやって
みたいと思ってたことを話した。ゆみこさんは慣れた手つきでコーヒ
ーを入れながら、やさしく聴いてくれた。

「で、ひろこちゃんは今何をしているの?」

そうゆみこさんは聞いてきた。わたしは、今は結婚して彼の仕事を手
伝っていることなんかを、話した。

「そっか。ひろこちゃんさ、夢のタイムリミットってあると思う?」

「夢のタイムリミット?」

「そう夢のタイムリミット。人ってね、夢をあきらめてしまうことっ
てよくあると思うのね。でもその夢は消えてなくなったわけではなく
て、ずっと実はその人の心の中にあるの。それでね、時々思い出した
ようにひょっこり顔を出すのね。でも大抵は、もう今からじゃ遅いか
なって言ってまたしまっちゃうのよね。何回かそれを繰り返している
と、いつしかなんかモヤモヤした黒い毛糸玉みたいになって心に絡ま
ったまま、忘れていくの。」

そう言いながらゆみこさんは、お手製のアップルパイを慣れた手つき
でキレイにショーケースに並べていく。

「でもね、本当に遅いのかしらねって思ったりもするのよね。もちろ
んスポーツ選手になりたいみたいな夢は体力の問題とかあるから、リ
ミットはあるかもしれないけどね、そうでなければ、わたしはタイム
リミットはないと思っている。 わたしも昔から持っている夢がまだ
実現しないままいくつかあってね、でもこれからそれを少しずつ実現
していこうとひそかに計画しているの。もうそれ考えていると楽しく
てワクワクしてね。」

「ゆみこさん、すごい!!それってどんな夢?」

「その一つはね、このCaféの2店舗目をつくりたいと思っているの。
でもまだすこし先の話だけどね」

「わー、ゆみこさんすごい!!」

「いつか、そのお店できたらね、ひろこちゃん一緒にやってみる?」
ゆみこさんはやさしく笑いながらそう言った。

ザワザワしていた。あきらかに今私の心はザワザワしている。そし
てドキドキしている。わたしの中で、バラバラだったパズルのピー
スがどんどんつながっていく。そしてそれが一本の橋のような形に
なって、私の過去と今と未来をつないでいくようなそんな感覚が私
の中に急激に湧いてきた。そして、何かが変わる予感が、わたしを
やさしく包んだかのようだった。
7.jpg
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